
1987年、パウエルは、PCRの能力をRNAの増幅にまで広げる方法を発表しました。この技術「RT-PCR」は、逆転写酵素によりRNAをcDNAに逆転写し、耐熱性DNA PolymeraseによるPCRでcDNAを検出可能なレベルまで増幅します。これにより、少量のRNAやmRNAでも、PCRにより検出することが可能になりました。
逆転写酵素の特性とその能力
逆転写酵素は逆転写ウイルスが複製を合成する際に使用され、またウイルスそのものにコードされています。In vitroでは、逆転写酵素の特性に依存しますが、概ね40~50℃で反応を開始します。逆転写酵素はプルーフリーディング活性がなく、ミスリーディングが多い酵素です。これはウイルス由来の酵素であるためで、DNA Polymeraseと大きく異なる部分です。
ネイティブな逆転写酵素は、複数の機能をもちます。そのDNA Polymerase活性は一本鎖RNAと一本鎖DNAに及びます。さらに、いくつかの逆転写酵素のRNase H活性は、RNA:DNAハイブリッドのRNAを分解します。テンプレートのRNA分解することは、cDNA合成後のPCRステップで大きな意味を持ちます。
1ステップRT-PCRと2ステップRT-PCRの選択
短時間で検出できます
- 2ステップRT-PCRに比べ、少ないピペッティング回数でセットアップできます。
- RT-PCRに要する然所要時間が短くなります。
コンタミネーションのリスクを最小限に抑えます
- 単一のチューブで反応を行います。
- チューブ間の反応液の移し替えが不要です。
- Procedure can be automated.
感度と特異性が向上
- 遺伝子特異的プライマーを使用することで検出感度と特異性が向上します。
- 逆転写反応で得られる全cDNAがPCRのテンプレートとなります。
反応条件の最適化が容易です
- 逆転写反応とPCR反応それぞれについて、最適な条件で反応させることが可能です。
様々な実験に適応できます
- いろいろなプライマー(ランダムヘキサマープライマー、オリゴ(dT)、アンカーオリゴ(dT)、遺伝子特異的プライマー)が使用できます。
- 一度で合成したcDNAを、複数のPCRで使用できます。リファレンス遺伝子とターゲット遺伝子の相対定量など。
- 逆転写酵素およびPCR酵素において、様々な酵素の組み合わせが選択できます。
RT-PCRにおいて、逆転写反応とPCRの間でバッファー置換などの精製ステップを不要とするため、逆転写反応用のバッファーはPCRステップに加えられても問題のないものになっています。
Choosing Between RT Priming Methods
オリゴ(dT)プライマーは、完全長のmRNAを逆転写する場合に用います。cDNAライブラリーの構築やcDANラベリングアプリケーションにおける、逆転写反応に用います。アンカーオリゴ(dT)18プライマーは、ポリ(A)テールの端の特異配列開始点付近から逆転写反応が始まるようにデザインされています。このアンカーにより、不要に長いポリ(A)領域を含まないcDNAが得られます。
しかしながら、mRNAが長い場合やポリ(A)テールを持たない(原核生物など)場合、ランダムヘキサマープライマーを使用します。ランダムヘキサマープライマーは、その構造からRNA鎖の様々な位置にランダムに結合し、RNAのあらゆる個所からの逆転写を可能にします。
ランダムヘキサマープライマーとオリゴ(dT)プライマーをミックスして使用することも可能です。
第3の選択肢として、遺伝子特異的プライマーがあります。遺伝子特異的プライマーはターゲットの配列だけを集中して逆転写しますので、高感度な実験が期待できます。1ステップRT-PCRの場合、PCRでも逆転写反応と同じプライマーを用いることになりますので、遺伝子特異的プライマーを用います。
図 1:各種プライマーを用いた逆転写反応の概要

Panel A:オリゴ(dT)nプライマー(ここでは n = 18)
Panel B:アンカーオリゴ(dT)n プライマー(ここでは n = 18) ポリ(A)テールの端から逆転写反応が開始されます。
Panel C:遺伝子特異的プライマー
Panel D:ランダムヘキサマープライマー
V = A、C、G
B = C、G、T
N = A、C、G、T
ノート:ランダムヘキサマープライマーは最終濃度60 µMで最適な結果が得られます。
プルーフリーディング逆転写反応の条件
突然変異率の高さはレトロウイルスの特徴です。これは、ウイルスにコードされた逆転写酵素によるゲノムの複製メカニズムに起因します。この逆転写酵素はウイルスのゲノムRNAを二本鎖DNA(dsDNA)に変換する際に使用され、多くのエラーを含んで複製します。この正確性の低さは3'-5'エキソヌクレアーゼの欠失により説明されます。このような逆転写酵素のエラー率の高さは、多くのアプリケーションにおいて適当ではありません。
このTranscriptor High Fidelity cDNA Synthesis Kitの主要な構成品はTranscriptor High Fidelity Reverse Transcriptaseであり、この酵素はリコンビナントの逆転写酵素とプルーフリーディング酵素のブレンドです。この酵素ブレンドにより、一般的な逆転写酵素の約7倍の正確性で逆転写することが可能になりました。
RNase H 活性
第一鎖cDNA合成後にRNAテンプレートが分解されない場合、次のPCRの間、RNAはプライマーのアニーリングを妨害します。RNase HによりテンプレートRNAが分解されることで、プライマーの結合効率が向上し、RT-PCRの感度が高くなります。しかし、RNase Hを追加することは、余分な手間とコストがかかります。Transcriptor Reverse TranscriptaseはRNase H活性を持っており、RNase Hを追加することなく同様の処理が行えます。

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